プログラム
ピアノとヴァイオリンのためのソナタ  ト長調 K.301
1.アレグロ・コン・スピリート
2.アレグロ

ピアノとヴァイオリンのためのソナタ  変ロ長調 K.454
1.ラルゴ−アレグロ
2.アンダンテ
3.アレグレット

休憩
ピアノとヴァイオリンのためのソナタ  ホ短調 K.304
1.アレグロ
2.テンポ・ディ・メヌエット

ピアノとヴァイオリンのためのソナタ  イ長調 K.526
1.モルト・アレグロ
2.アンダンテ
3.プレスト


プログラムノート      (中村ゆかり)
ソナタ ト長調 K..301
 1778年、12年間ヴァイオリン・ソナタ制作から遠ざかっていたモーツァルトは 作曲家シュースターの作品に触発され、6曲のヴァイオリン・ソナタを書き始める。マンハイムで作曲が開始された6曲のソナタは「マンハイム(あるいはプファルツ)・ソナタ」と呼ばれ、作品1としてパリで出版された。K.301 はその第1作目のソナタで、ピアノに重点が置かれてはいるものの、シュースターからの影響を反映し、ヴァイオリンの伴奏的役割が弱まり、ピアノとヴァイオリンが交互に旋律を奏でるように作曲されている。

ソナタ 変ロ長調 K..454
 2重奏ソナタ(ヴァイオリンとピアノの役割が対等)の完成型を示す作品として位置づけられる「3大ソナタ」の一つで、特にヴァイオリンの協奏的華麗さが際立っている。1784年にヴァイオリンの名手ストリナザッキとともにヨーゼフ2世の御前演奏を行う目的で作曲された。この際、ピアノ・パート譜の書下ろしが間に合わず、モーツァルトは簡単なメモを頼りに演奏したという天賦の才を示す逸話が残っている。

ソナタ ホ短調 K..304
 「マンハイム・ソナタ」の一つで、1778年にマンハイムとパリで作曲された。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中では唯一短調による作品で、交響曲に同じく緊迫感と憂愁な響きが作品に格別の情趣を添えている。当初、初夏のパリで作曲されたと考えられていた頃には、悲劇的な短調の響きが同時期の母の死と関連付けて語られていた。しかし自筆譜による研究から、マンハイム時代に作曲が開始されたことが解明されたため、現在ではマンハイムでのアロイージアとの恋の結末と関係付けられている。

ソナタ イ長調 K..526
 1787年に作曲された「3大ソナタ」のひとつ。楽章間の効果的な対比、変化に富む主題、色彩豊かな調構成、ヴァイオリンとピアノ両手による厳格な3声部構造、さらに終楽章の壮大なロンド・フィナーレなど、溢れる才能と卓越した技術が真に融合したモーツァルトのヴァイオリン・ソナタの頂点を示す作品である。終楽章の主題が、幼き日に影響を受けた作曲家アーベルのピアノ・トリオから引用されていることから、同年に世を去った作曲家を追悼する目的で書かれたと推測されている。

プロフィール
牧野 縝 MAKINO, Saori (piano)
ピアノを笈田光吉、M・エッガー、金澤希伊子、安川加壽子の各教授に師事。東京芸術大学卒業。1972年ドイツに渡り、ハンブルクの国立音楽大学にてC.ハンゼン教授のクラスで研鑽を積む。同大学卒業後更に演奏家試験課程を修了し、ソリストとして又室内楽奏者としての多くの演奏活動を行う。この間、イタリア・セレーニョのポッツォーリ国際ピアノコンクールに入賞、フランス・コルマールでは国際室内楽コンクールで一位入賞を果たす。また、パリのV・ペルルミュテール教授にも薫陶を受ける。1983年からは東京芸術大学講師、洗足学園大学教授を歴任、現在は愛知県立芸術大学教授、洗足学園大学非常勤講師。

福本 泰之 FUKUMOTO, Yasuyuki(violin)
 島根大学教育学部特音課程卒業。愛知県立芸術大学大学院修了後、直ちに同大学音楽学部の専任助手となり母校にて後進の指導にあたる。1994年海外研修にて渡欧、ウィーン国立音楽大学のM.フリッシェンシュラーガー教授のもとで研鑽を積んだ。これまでに名古屋を拠点にリサイタルやオーケストラとの協奏曲共演のほか室内楽を中心に演奏活動を行う。現在、愛知県立芸術大学音楽学部助教授。「ザ・ストリングス名古屋」メンバー。名古屋(二期会)オペラ管弦楽団コンサートマスター。「J.S.バッハ・ムジークカペレ」メンバー。