プログラム
F.メンデルスゾーン チェロとピアノのための協奏曲風変奏曲 op. 17
J.S.Bach 無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV 1010
プレリュード ・ アルマンド ・ クーラント ・ サラバンド ・ ブーレ ・ ジーグ
       
ドビュッシー ピアノのために
      プレリュード ・ サラバンド ・ トッカータ

        休憩

        J.ブラームス  ソナタ ニ長調  op.78 雨の歌
      ビヴァーチェ マ ノン トロッポ ・ アダージョ ・ アレグロ モルト モデラート


プログラムノート

メンデルスゾーン(1809ー1847) 協奏曲風変奏曲 作品17

1829年作。余りの多忙さに、普通の人の倍の速度で燃え尽きたような人生を送ったメンデルスゾーン。
10代ですでにすばらしい作品を書きはじめていたが、これはチェロを弾いていた弟パウルに捧げられた。
テーマに続く8つの変奏曲はそれぞれ個性のある魅力的な、小品とは言えない小品である。


バッハ(1685ー1750) 無伴奏チェロ組曲第4番 BWV1010

全6曲になる組曲は、1720年頃彼がまだケーテンの宮廷に仕えていた頃に出来上がったと言われている。
この第4番は、7部のオーソドックスな舞曲スタイルから成り、チェロの超絶技巧(特に左手)としても有名。
3曲目のクーラントはフランス風。イタリア風のコレンテも別の曲にはあるが、このフランス風はゆっくりで、内容も複雑である。
1小節6拍を2×3と3×2に交ぜ合わせてあるのが面白い。
バッハ作品一覧表を眺める毎に、この多作さと内容の精巧さは人間業とはとても信じられない、恐るべきものだと感心するばかりである。

ドビュッシー(1862ー1918) ピアノのために

1901年の作。10年間ピアノ音楽から離れていたドビュッシーは、この頃マラルメのサロンでヴェルレーヌ達と交流していて新たに道を開き、
この曲によって彼の音楽色彩感がますます磨かれて来た事がうかがえる。ドビュッシーは良くモネと比較されるが、文字通り印象派の新風を確立させた人。
この3曲はバッハにも見られる古い様式を用いながら、彼独特の和声感を駆使、伝統とフランスの新時代感覚がパレットの上ですばらしく混ぜ合わされている。


ブラームス(1833ー1897) チェロソナタ 作品78

チェロソナタとは言うものの、彼のヴァイオリンソナタ第1番のチェロ編曲版である。原曲は1879年に書かれ、"雨の歌"は、全曲通して見られるリズムが、
3楽章ではそのままそっくり使用されている、自作の歌曲"雨の歌"(8つの歌曲、作品59の3)に由来する。
彼の大好きな詩人グローテのテキストで、盛夏に涼しい雨が降り続き、自然の恵みで全てが活き活きと育って行く、その雨を心に沁み入る神の創造物としての喜びに、
静かに重ねてゆくもので、いかにもブラームスらしい選択である。編曲はブラームスでなく、彼が後年演奏会で度々やってきたライプツィヒで出会ったパウル・クレンゲル
(1854ー1935)というヴァイオリニスト、指揮者による。
パウルの弟ユリウスがあの有名なチェリストである。この編曲に関してパウルがどの程度ブラームスと話しをしたか資料が無い。
第一版がブラームスの没年にあたり、この仕事にブラームスが目を通したか定かで無い。ただなぜかパウルはあちこちブラームスらしからぬ(原曲には無い)音を足しているので困る。
その方がきれいに?聞こえると思ったのかもしれないが、原曲を良く知る者にとっては異様であるので、私は又勝手にブラームスに戻している。
パウルはすでに亡くなっているから、その事を尋ねたくとも出来なくてはなはだ残念である。





プロフィール

C.ギガー  
1967年スイスに生まれる。ヴィンタートゥア音楽院において、チェロをズザンネ・バースラーに師事。
 80年、84年共にスイス国内コンクールで優勝。 若くからスイス各地で多くのコンサート活動を行う。その後、ドイツのケルン国立音楽大学にてボリス・ペルガメンコフに師事。 92年、最高点で卒業。同時にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の主席チェロ奏者に就任。 また、メンデルスゾーン国立音楽大学の講師となる。 96年にはライプツィヒ国際室内楽フェステイヴァルを設立し、以来その音楽監督にあたっている。 これまでに、ブロムシュテット指揮によるゲヴァントハウス管弦楽団とのドヴォルジャークチェロ協奏曲、ベートーヴェンの三重協奏曲を演奏し好評を博している。その他、著名な指揮者と共演し、多くの放送録音を行い、ピアニスト小林由佳とのデュオなどもAccent Musicよりリリースされている。

小林由佳
桐朋学園大学卒業。 ロータリー財団奨学金を得て、フランクフルト及びケルン国立音楽大学に留学。 ソロピアノ科、室内楽などを主席で卒業。 以来、ドイツで室内楽を中心に一流演奏家との共演を始め、音楽祭の主催、マスタークラスの指導などに活動している。 2002年ブロムシュテット指揮によるゲヴァントハウスオーケストラとのベートーヴェン三重協奏曲は好評を博した。

流れている曲は昨年他界した山のホールのスタッフのために演奏してくださったカザルスの「鳥の歌」です。