1994年8月19日

【プログラム】
  1.J.J.フロベルガー(1616〜1667)
        組曲第1番イ短調
           アルマンド
           クーラント
           サラバンド

  2.G.F.ヘンデル(1685〜1759)
        調子のよい鍛冶屋
  3.J.P.ラモー(1683〜1764)

         メヌエットTとU
        灰かな嘆き
        旋風
        嘆息
        一眼巨人
            
4.D.スカルラッティ(1685〜1757)
   ソナタハ短調 カークパトリック99
   ソナタハ長調 K.100
   ソナタニ長調 K.298
   ソナタニ長調 K.299
   ソナタホ長調 K.380
   ソナタホ長調 K.381
   ソナタト長調 K.424
   ソナタト長調 K.425

 【曲目解説】
 フロベルガーは、ドイツのバロック鍵盤音楽の基礎を築いた17世紀の作曲家で、ローマでフレスコバルデイに、パリでシヤンポニエールに学んだ。この組曲は後のバッハの組曲などと違って、僅か3曲の舞曲から成っているが、フロベルガーのロマン的な表現を十分に示した美しい作品である。アルマンドはゆっくりした禰り、クーラントは早い3拍子、そしてサラバンドは格調高い3拍子であるが、3曲いずれも同じテーマから出来ていて、いわば変奏曲の形をとっている。

 ヘンデルはドイツで生まれたが、ロンドンで活斉した。オペラやオラトリオ、室内楽など作品の数は多いが、チェンバロ曲も若い時に多く書いた。この主題と5つの変奏曲は組曲第5番の一部であるが、1720年に出版された。組曲ではÅirと題がついていて、そのあとの変奏曲にはそれぞれDoublelとか2とか示してあるので「調子のよい鍛冶屋」という題がどこから出たのかはっきりしないが、一説によると出版を請け負った人が、この有名なへンデルと自分の父親(鍛冶屋さん)を結びつけようと、勝手に題名をつけてしまったとか言われる。いずれにしても、耳になじみ易い主意、そしてこの主題がはっきり聞こえる変奏曲の数々は聴いていて華しく、カチンカチンと叩く瀬冶屋さんの槌の音とは無閑係のようだ。

 ラモーはフランスのロココ時代の重要な作曲家でオペラを数多く作曲した。クラヴサン(フランス語でチェンバロのこと)曲は、フ ランス人らしく、詩的あるいは描写的な凛名がついているのが多い。Les Tendres Plaiatesは、感じ易いような憂いとでも言おうか、 Les Soupirsはため息が音楽の中に鰯こえる。
こうしたおだやかさの反面「旋風」は強いっむじ風に吹きさらされるようなパッセージの早い上下が、いかにも絵のようだ。「一眼巨 人」はギリシャ神話の中からとった産で、意味ははっきりしないが、激しく荒れ狂うモティーフの連続の中でヴィルチュオーソの技巧 を展示する。なお「憂い」「旋風」「一眼巨人」の3曲はロンドー形式(ABACA・・・)で、Aの部分が何回も繰り返される。ミニュエは1728年頃出版された曲集から、他は全部1724年出版されたクラヴサン曲集から選んだものである。  スラルラッティはナポリで生まれたが、ポルトガルとスペインで生活し、王妃(後にスペイン女王)のチェンバロ教師の傍ら活躍し た。550曲以上にものぼるチェンバロのソナタは、独特の作風と最高虔の演奏技術を必要とするのが多く、18世把、いや古今を通じ て代表的鍵盤音楽の中に加えられる。K(カータパトリック番号)99と100は両手の交差が目だちスリル溝点。ニ長調のK.298はマン ドリンの音を取り入れたもの。そしてK.299はとてつもなく厄介な曲だけれど、聴いている方は楽しくなってくるだろう。K.3き0はな じみ易い旋律できっと知っている人も多いかと思うが、].381は和声の転々とした移りが面白く、].424はちょっと見栄を張ったよう な曲、そしてK.425はスピード感の中に長、短調の対比がはっきり出て色彩を豊かにしている.
 

解説:橋本英二

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